10月22日投開票の第48回衆議院議員総選挙は、自民党・公明党の与党が3分の2を超える313議席を獲得したほか、公示日直前に結党した立憲民主党が野党第一党に躍り出るなど、様々なニュースになりました。
さて、選挙も終わったということで、11月1日には特別国会が召集されました。冒頭に行われた内閣総理大臣の指名選挙では、自民党の安倍晋三総裁が第98代内閣総理大臣に選出され、第四次安倍内閣が発足しました。ところで、安倍首相が内閣総理大臣の職を務めるのは2006年から2007年にかけての約1年間と、2012年から現在に至る5年間の二度ですが、今回の内閣が「第四次」とよばれるのは、なぜなのでしょうか。
国会の会期
日本の国会は会期制をとっており、国会の会期には以下の3種類があることは、よく知られていますね。
- 常会(通常国会)
- 臨時会(臨時国会)
- 特別会(特別国会)
憲法には、それぞれの会期について、以下のように規定されています。
第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
② 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
③ 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
出典日本国憲法
例年では、1月に常会(通常国会)が召集され、150日間の会期の間に次年度通常予算の審議をはじめとする様々な重要法案の審議が行われます。
通常国会が150日間の会期を終えて6月ごろに閉会すると、国会はしばらく閉会となります。3か月ほど間が空いて、9月末から10月上旬ごろに臨時会(臨時国会)が召集され、補正予算や通常国会で消化しきれなかった法案などが扱われることが多いのです。
総選挙と特別国会
特別国会は、先に引用した憲法第五十四条の通り、衆議院議員総選挙が行われたのち30日以内に召集されることとなっています。
ここでもう一つ注目しておきたい憲法の規定に、以下の第七十条の規定があります。
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
出典日本国憲法
内閣総理大臣の職に就くのが2回目である安倍首相の内閣がなぜ「第四次」と呼ばれるのかの答えがここにあります。
総選挙が行われた直後の国会の冒頭で、内閣は総辞職しなければならないことが憲法第七十条に定められています。そして、内閣が総辞職した場合には内閣総理大臣の指名が必要になりますが、憲法第六十七条では、すべての案件に先立って内閣総理大臣の指名が行われることになっています。
このことから、安倍首相は前述したように2006年~2007年と、2012年から現在の二度にわたって内閣総理大臣の職を務めていますが、実際は総選挙を挟んで以下のように四度に区分されることになるのです。
- 2006年9月26日(第三次小泉内閣総辞職)~2007年9月26日(第一次安倍内閣総辞職)
- 2012年12月26日(12月16日:第46回衆議院議員総選挙)~2014年12月24日
- 2014年12月24日(12月14日:第47回衆議院議員総選挙)~2017年11月1日
- 2017年11月1日(10月22日:第48回衆議院議員総選挙)~
こうして、安倍首相は総選挙前の第97代首相改め、11月1日からは第98代首相となり、内閣も「第四次内閣」と称されることになったのです。
まとめ:選挙は「後」が大切
社会契約説で有名なフランスの哲学者ジャン=ジャック・ルソーは、「イギリス人が自由なのは選挙の間だけだ」という言葉を遺しています。
選挙の投開票日周辺はどの政党が勝つか負けるかで大いに盛り上がりますが、本当に大切なことは、選挙の「後」に国会議員や内閣がどのような政治を行っていくかではないでしょうか。
特別国会の会期は、多くの場合内閣総理大臣の指名に議題が限られるため、数日間程度となることが多いのですが、今回は秋の臨時国会の冒頭で衆議院が解散されたこともあり、12月上旬までの39日間が予定されています。
これから最長で4年間の任期を務めていく衆議院議員の方々がどのような論戦を繰り広げていくのか、きちんと目を向けていきたいですね。